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2000年代前半の同人ショップ
1990年代イベント会場でしか入手できなかった各種同人誌は、2000年代以降になるとはエロ同人誌販売の難易度が低下します。「コミックとらのあな」、「メロンブックス」等の同人委託販売できる同人ショップが増加したためです。各社とも地方までは手を回すことができなかったのですが、北海道、東京、愛知、大阪、福岡など主要都市には進出するようになります。
同人ゲームの扱いはエロ同人誌に比べて悪かった(現在も?)のですが、それでもフロアの一角に、必ず配置されるぐらいには入手手段が増えました。私の行き付け店舗だと同人ゲームは、全年齢・R18を区別せず全て同人ゲームフロアに配置していたことが印象に残っています。
こうして、同人ゲームを購入する手段が増えたため、一種の「同人バブル」ができました。タイプムーンは2000年代前半に月姫を、そのまま2004年に商業化して「Fate/stay night」を発売、竜騎士07がひぐらしのなく頃にを2002年~2004年の夏・冬コミで8回に分けて分割販売、東方シリーズも人気を博します。ノベルゲーム以外でも「黄金フロンティア」、現在も「UNDER NIGHT IN-BIRTH」などで商業活躍している「フランスパン」など現在も同人ゲーム分野で活躍しているが表に出てきた時期です。フリーゲームのシューティングを作り続けたSITER SKAINが「神威」を発売したのは1999年でした。
▲神威は英語版をsteamで購入できます。この時代に発売した中堅作のほとんどは、現在入手方法が中古品購入など限られている状況で、これはありがたいことです。同作者が製作した名作「RefleX」なども。
各種DL数が分かるデジ販売とは異なり、同人ショップでの売上を第三者が知る手段は多くありません。ただ、上記のような大作ゲームは各種同人ショップの各フロアで大きく扱われており、第三者が「売れている」ゲームだと知る手段の1つになっています。故に、大きくフィーチャーされたゲームの類似系や大々的にフロアが取り扱う二次創作分野は、翌年以降に増えていくことになります。
さて、当時の人気作は面白かったのですが、それ以外はと言えば遊べるゲームの例で言えばタイピングや簡易的なシューティング、脱衣麻雀などミニゲームと混ぜ合わせたゲームが多かったと思います。また、フリーゲームがRPGツクール2000含め利用が簡単なゲームエンジンにより開発だったことに対し、同人ゲームは、ほぼ自作プログラムかflash作品であり、むしろ、満足度というよりは、「個人開発でこんなこともできるんだぜ」というノリで、売ることよりも自分が開発して楽しむことを主眼にした作品が多く、ある意味、最も同人らしい時期でした。
また、どこかツクールで有償販売ゲームを作ってはいけない空気が流れていました。
このように、全年齢については(タイプムーンはR18ですが)、同人ゲーム分野も現在ほどではないにしろ、活気がありました。この当時のゲームもいくつかはプレミアム価格化しています。そして、同人エロゲについては……と言うと、ほぼノベルゲーや調教SLGを除いて満足できるゲームが少なかった時期であると言えます。また、同人ショップが通販でしか対応でしないゲームが多く、場合によってはエロノベルゲーと一緒の棚に並ぶので、1個1個パッケージを取ってみないと遊べるゲームかどうかも不明という状況でした。
また、注目作として棚に大々的に並べるかは、エロ同人として人気サークルかどうかが重要であり、ゲームの質はあまり重視されていない傾向があります。つまり、単純に面白い遊べるエロゲがあってもユーザーが探せない状況です。
DLSITEの過去作を確認しながら、当時同人ショップで大フューチャーしたゲームがないかと探したら一応ありました。当時はどこの同人ショップも二次創作漫画専門「クリムゾン」を大フィーチャーしており、あのクリムゾンがRPGを出すとのことで、大プッシュしていました。クリムゾンの「D.Q.Fight」と続編「F.F.FIGHT」。
D.Q.Fight (FANZAはこちら)
▲実際の出来はDLSITE評価3.78から判断してください。現在10,000DL越え。
とは言え、あまりユーザーの目に届かないところで、現在に生き残っているサークルさんが一部簡単なゲームを作り、技術を蓄えています。
SPLUSH WAVEは、脱衣麻雀や調教シミュレーションを中心にコミケで販売を行っています。確か、2006年頃は現在ほどの知名度は無かったはず。すでに入手手段はありませんが、作品ページに過去の作品も掲載しています。
バトルファックRPG「ALCHEMY OF MONSTER GEM -ファリアスの弟子と黄泉の使者」が有名なアイソトニクスは、当時FLASH製のシューティングやテーブルゲームなどを公開しています。
森と触手のシューティング PHASE1 (FANZAはこちら)
▲flash製の横スクロールシューティングゲーム。
現在は「魔剣士リーネ」シリーズが主流となっているまくらカバーソフトは各種アドベンチャーをリリースしています。
まさぐりモード with イライラ棒
▲お触りゲーム。
エロ格闘ゲームで知名度があるStudioSは、この頃だと調教シミュレーションを中心にリリースしています。StudioSの知名度が大きくなるのは2007年以降ですね。
絶頂地獄 (FANZAはこちら)
▲この頃からリョナ嗜好を表に出しています。
と、結論は2006年までで考えると、遊べる同人エロゲは地味な存在だったということです。パーティー系や小物ゲームが主でした。とは言っても、DLSITE過去作の中には面白そうなゲームも交じっていたため、「面白いゲームを拡散する手段が限られていた」が正しいかもしれません。これが2007年以降、いろいろと面白くなっていきます。
デジ同人乱立による戦国時代
ところで、この時期のデジタル同人はどうだったのでしょう。DLSite.omは1996年に、DMM同人は2003年に、メロンブックスDLは2005年に、「DL.Getchu」が2006年に運営をはじめます。その他、「アキバイン.com」、「とらのあなダウンロード」、「デジぱれ」など今は無きサイトを含めデジ同人サイトのパイを奪い合う戦国時代に突入します。
当時はPS2時代でありPS STOREも任天堂オンラインショップも無く、ゲオなどで直接パッケージを購入する物販が主流でした。ガラケーアプリが発達したのも2000年代後半であり、データを買う概念がほぼありません。また、光通信等の常時接続が普及しはじめた時期であり、大容量ダウンロードには耐えられないユーザー事情もあります。
他にも、インターネットでクレジットを使うことに忌避感を覚える層はより多かったと思います。副次的な効果として「WEB MANEY」,「BITCASH」などのデジタル通過が発達するのもこの時期です。ですが、そもそもデジ同人をデジタル通過で購入できる事への知名度も低かった時期です。
まだ、大きな問題がありました。サイトにより異なりますが、会員になってさえも再ダウンロードの回数制限や再ダウンロード期限があることです。つまり、戦国時代に突入した割にデジタル同人を利用する層は、ごく限られた層になります。
また、当時のDRMは質が悪くPCの移行が完全に不可能でした。「PC移行時に再度購入してください」という形を取っておりユーザーからの反発が根強くなります。海賊版は現在のように表に出ず一部の悪意あるユーザーのみが利用する状況であり売上に大きく影響する状況でないこと、そしてこの時期が戦国時代であるため、各デジ同人ショップも迂闊にDRMをかけることもできませんでした。同人ゲームにユーザー認証などのDRMをかけると売上が低下し、海賊版の歯止めができない状況を作っており、現在も尾を引く問題です。
現在、「DLSite.com」が生き残っているのは、もっとも早期に、ダウンロード回数・期間の無制限化を行ったからだと思います(そもそもしていなかったかもしれないけど記憶が定かでないので)。あくまで1ユーザーである私の意見ですが、最も信頼がありました。
これらの理由から2006年は、まだまだ同人エロゲも同人ショップによる物販が重要です。サークルもDL販売より同人ショップでのパッケージ販売に力を入れており、DL版未販売というケースの方が多かったぐらいです。でも、今後のエロ同人デジタル化主流の可能性を秘めた時期でした。
RPGツクールの同人市場投入への忌避感
当時フリゲで大盛況となっていたRPGツクール2000,2003ですが、あくまでフリーゲームや一部のシェアゲームのみであり、同人市場ではほとんど見かけることはありませんでした。それでも全年齢ではいくつか有料で販売していたサークルがあります。3点ほど代表的なものを挙げると、まずはアルファナッツの「天使の微笑」及び「女神の涙TRUE」。
天使の微笑
女神の涙TRUE
▲「今の風を感じて」でコンパク金賞を受賞したアルファナッツはシェアウェアの販売に踏み切ります。なお、現在は2作ともDLSITE大型セール時の90%OFF常連作なので気になったらその時にでも。発売当時はまだDLSITEでは販売しておらず、DLSITEの発売時期は後発です。WebMoneyによる女神の涙TRUEの買い方道場オンザコミック(仮)を読むと、当時のデジタル通過普及度や購入の複雑さが分かりかと思います。
感動的で伏線をばら撒くドラマで人気となったChild-Dreamは「21世紀版Lost Memory」や「Creatures~生きとし生けるもの達へ」などをシェア公開。シェアであるにも関わらず、多数レビューサイトで感想が書かれるなど人気作となりました。ちなみに21世紀版は分割方式で合計金額2700円ほど。当時としては驚くほど高価な同人作ツクール製品でした。現在CreaturesはツクールMVで無償公開中、ロストメモリー他旧作はモニタウェアとして特定条件の元無料でプレイできます。詳しくは公式サイトの作品紹介ページへ。
最後の1つは同人サークル「はちみつくまさん」が発売している二次創作のツクール製RPG群です。「AirRPG」「ToK」「Romancing Kanon」など。サークル当初はKEY作品を後半になると東方作品を混ぜた二次創作を基本としつつ、北斗の拳、アリスソフト、リーフなどの要素もたっぷりと混ぜたカオスで熱い作品になっています。なお、完全版商法の常連であり、同じ作品を2,3回に分けて販売し、完全版→コンプリート版と何度もパワーアップバージョンを発売して最終的に現在DLSITE等で販売している形になっています。(当時の人気サークルはこの販売方法が多かった)。オリジナル曲を大量に用い、イラストも独自で大量に用意、システムも作り込み、同人でのツクールゲームの売り方を提示しました。はちみつくまさんも、当時の同人ショップで大プッシュされていたサークルです。
ToK CompactEdition (FANZAはこちら)
▲アリスソフト「闘神都市」の世界観である大会をベースに進んでいくTOK。総プレイ時間が100時間を越えるは本当で、ボリュームたっぷりのゲームでした。私のような飽きっぽい人間だと戦闘面倒くせーーーとなってしまいますが、根強い人気を誇る作品。
その他、ネット上でのシェア販売をしている作品も、コミケなどに出店し一度で消えていくサークルもありましたが、ツクール製の有料販売で当時話題になったのは、この3サークルだと思います。そして、同人エロゲとして発売したツクール製ゲームは、私が知る限り0です(マイナーなところではあるかもしれませんが)。
いくつか理由が考えられます。まず、良作フリーゲーム以上のクオリティを出すことが難しかったこと。特にコンパク等で素晴らしいフリーソフトが登場し、テックウィンなどの雑誌でも紹介されるような時期であり、全年齢では同人市場にはちみつくまさんがいる始末。その他、同人ゲームが技術博覧会的な側面がありRPGツクールではそれを生かせないこと、販売しても売れる可能性が低いことも一因として考えられます。また、有償を禁止するフリー素材が多かったこと、アダルトに関しては規約ではよく分からない状態であることなども理由の1つでしょう。つまり、売れるかどうか分からない分野に「大量の製作費と時間」をかけて発売する必要がありました。
何より、エロ同人でツクール製ゲームを出すことをタブー視する環境が当時の同人市場にはありました。はちみつくまさんでさえ、ツクール製ゲームで売ることに対して叩かれていたように思えます。
この時期にSuccubus Questが投入されたのでした。
続く。
[PR]2006年9月頃まで発売でなんとなく面白そうと思ったR18ゲーム
夜光蛾3 / Artesneit
(FANZAはこちら)
RPGジャンルだけど、たぶんメトロイドヴァニア系弾幕アクション。面白そう。
萌しむ ヨーロッパ美少女戦線異状アリ!? / しるふ・わーくす
第2次世界大戦開戦直前のヨーロッパを舞台にした美少女戦略シミュレーション!!ほぼ、サキュバスクエストと同時期でクオリティ高そう。
G.M.S / L.T.T
(FANZAはこちら)
ガンダムを美少女化した戦略シミュレーションRPG。
HORNS MARCH α / 港北すぺくたあ・MUTATE Software
飛竜に乗り、仲間たちと協力して任務を遂行していく3DリアルタイムSLG。
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