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独自プログラムのRPGが流行した2000年代後半
サキュバスクエストの流行からすぐにRPGツクール製エロゲが出てきたわけではありません。サキュバスクエストを含めてツクール製の動きは次回以降にまわすとして、今回は当時の同人ゲーム側に話をフォーカスしたいと思います。
この2006年代後半から2010年代にかけて増えたのはRPGツクール作品以外のRPGを含む、独自プログラムによる「遊べるエロゲ」です。一般同人関係の発展が著しく、エロゲ同人は一般同人に追い上げるようにして品質を上げていきました。「技術を見せあう」ゲームもあれば、遊べる商業エロゲに殴り込みをかけるような名作の原型が生まれ始めました。
ただし、当時はまだ1人で気軽に開発できる環境が整っていません。まだ、サキュバスクエストの一例があるのみでツクールのエロゲ普及は一般では無いため、絵師はADVかイラストで、ゲーム開発者は独自プログラムが鉄板です。UNITYの無料利用は2012年2月、UE4の無料利用は2015年3月。当時はUNITY,UE4など無い時代なので、本当に限られた人しかゲームを出せない状況でした。また、DL販売もまだまだ発展時期で、主要の販売所にすることができず、依然と即売会と同人ショップが主戦場となります。
当時は絵師とゲーム開発者が組み、見栄えのよいゲームが売れ始めた時期であり、個人参入はさらに障壁が高くなります。エロゲユーザーとしては、まだまだ発展途上状態であることを実感する時期です。人気作を少数のサークルが独占し、さらに品質もある程度見込めるようになったこの時期のおかげで当時エロ同人ゲームに参入していたサークルは現在も人気を誇っています。
また、現在のように性癖が特化しているようなゲームはあまりありません。おそらく、発展途上でありゲームの面白さの追求にフォーカスが当たっていたからだと思いますが、オーソドックスな恋愛エロか、又は商業エロゲに近いような凌辱であり、今プレイするとあまりの清らかさにびっくりするかも。(逆に現在はこの種の安全的なシチュを求める層が増加気味なのに、作品が少なく需要が逆転しています。)
ゲームシステムも、現在は段階差分や避けゲーと絡むエロ、経営とエロの結びつきなど現在は「この種のシステムがエロい」とある程度パターン化ができています。が、当時は手探りの状況でした。そのため、エロくは無いけどゲームは面白いようなパターンもあったと思います。
以下は現在DL販売しているのと同時に発売すると同人ゲームコーナーにてサキュバスクエストほどではないにしろピックアップしていたゲーム達です。私も同人ショップで知ったゲームばかりです。
ののの通信も人間の闇に焦点を照らしたストーリーと魔物の王となって商店を経営するドラクエ二次経営シミュレーションゲーム「魔王軍へようこそ」の第一弾は2006年夏コミに販売(DLSITEへは2007年夏)しました。現在も続くお店経営の基礎システムは1から大きく変化しておらず、2006年の時点ですでに高い完成度を持っています。
元はラグラロク二次創作の戦闘がドラクス風の育成SLG「ラグナオブポリン」「ポリンセスメーカー」(両作とも現在は入手手段無し)などを発表していました。技術力は感じられるけど企画そのものに力不足を感じる作品で、この2作の経験と反省点の土台がが魔王軍を生み出したとも言えます。また、当時の同人エロゲの人気作では主流であった恋愛ノベルゲーの影響で魔王軍1,2あたりと同時期に「落日 -らくじつ-」「恋ノ橋」などの恋愛ノベルゲームを公開しています。
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▲2006年当時はドラクエ二次エロブームが大流行をはじめた時期。ゲームそのものも面白いですが、知名度を上げるのに一役買ったのはブームにのっかることができた点もあると思います。
200年代前半から自作プログラムノベルゲームやテーブルゲームを製作していたSPLUSH WAVEは2005年以降現在の看板ともいえる脱衣麻雀系のドラクエ二次「Dragon Mahjongg」を公開します。その後もナンバリングシリーズ化、ベースシステムは同じでFF二次にして再構築した「究極幻想麻雀」など麻雀系を次々と発売します。麻雀よりも簡易麻雀をRPGの戦闘システムに組み込んだことが決め手で、当時は少ない同人RPGとして麻雀ファン以外にも需要がありました。その他、ののの通信と同じくドラクエ二次であること、CGの画質が同人業界でも群を抜いていることなどが人気の決め手であると思います。
▲記念すべき第一弾。この頃はあくまで麻雀ファン用であり、それ以外のユーザーに不親切だったりしますが、シリーズを重ねるごとに快適になっていきます。現在は麻雀以外にも看板タイトルがありますね。
現在はダンジョン探索ゲーム「スクールオブファンタジア」で商業化デビューを果たしている玉藻スタジオは且つて同人方面で様々な遊べるエロゲを積極的に製作していたサークルです。2008年5月に新妻との結婚を守るため、仕事して結婚・マイホームを購入していく「めざせマイホーム!~新妻を守れ~」(寝取られあり)、騎士育成SLG「聖少女騎士リオン」そして「冒険者の町を作ろう!」など意欲的なゲームを発売しています。「プレグナント・ブレイブ ~ボテ腹勇者の仔作り大戦略(タクティクス)!~」のみRPGツクール製ですが、その他は全て毎回独自システムやコンセプトの異なるゲームを発表しています。
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▲普通に恋愛ゴールするだけではもったいなく、積極的にNTRしていく作品。
現在は「マジック&スラッシュ-見習い冒険者リルのHな大冒険-」などで人気のルナソフトは2000年代後半から2010年代前半に活躍した「すたじおおぐま」、「constructor」、「あぶらスタジアム」の3サークルが合併したサークルです。この3サークルは当時、上記サークルと同レベルで存在感があり、知名度があったサークルです。同人ショップでも恒例のように並んでいました。
すたじおおぐまは硬派な戦略シミュレーション、調教シミュレーション、RPG、タワーディフェンスなどを発売しています。当時の遊べるエロゲとしてはかなり異質な調教や闇堕ち系のダークエロをメインとしており、堅実なプログラミングと世界観でファンを魅了していきます。ルナソフトの特に初期作などは、他2作と比べても、ほぼ前身と言ってもよいほど世界観が似通っています。また、作品本数も定期的に出ており、急激に知名度が上がり、そして知名度が上がった頃に新サークルに移行した印象があります。
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▲すたじおおぐま最終作。悪堕ちをテーマとしたタワーディフェンスゲーム。
constractorはすたじおおぐまとは正反対の世界観、正当系。明るくポップなタイトルにメインシナリオはノベルゲーで、独自のダンジョンシステム・戦闘システムを搭載したマウスで遊ぶ系のRPGを出しています。DLSITEの売上本数は低いのですが、同人ショップに並ぶ常連サークルだったため、全体では売れていたゲームかと。個人的な印象は、商業系のRPGエロゲに一番近かったサークルかなと。戦闘のやり込み関係がしっかりしています。
▲武器密売組織経営RPG。Hはおまけでゲームが面白いRPGの代表格だったかと。(若干思い出補正入っているかも。)
あぶらスタジアムはツクール系なので今回紹介は省きますが、世界観はconstractorに近かったかと。
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▲あぶらスタジアムの作品が揃うパック。
この時代に私が思っていたことは「オーソドックスなRPGが無い」ことでした。エロ同人業界にRPGやSLGが増えはじめた時期ですが、どれも正統派からは外れる変わったシステムを搭載しており、ある意味オーソドックスなRPGと違いますよ……を売りにしていました。もう1つ言えばRPG系で売れるのは、小綺麗であり、荒々しさみたいなものがなかったのもこの時代(そもそもマニアックだと同人ショップに置かないので知る術がない)。
今の時代に生きる私達からすれば、この時代に無くユーザーが求めているものもいくつか想像できるかと思います。
エロアクションブームの芽生えとその他エロ同人の傾向
その一方で、エロアクション関係のサークルもちらほらと。特に当時一番知名度があったのはStudioSです。ストリートファイターシリーズ最新作の4が8年ぶりに出た翌年あたりにストリップファイター4を発売。原作に似た挙動のキャラはもちろん、他有名格闘ゲームを模したキャラもおり、そのパロディさと、当時は珍しい「アクションで犯す」行為、それでいて格闘ゲームとしての完成度とオリジナルドットの良さで一躍有名になりました。
当時はニコニコ動画が大盛況な時期、そのブームに乗って、ニコニコに受けるネタを豊富に使ったPVを公開したことも決めてかと思います。「ストリップファイター4」と「阿久女イク」の2つ合わせてStudioSを知った方も多いはず。ストリップファイター4の時は「またお前か」状態でした。残念ながら当時の動画は削除されていますが、「エロゲユーザー向けではなく、一般向けにウケを狙ったPVで人気が出た」状況は当時のニコニコ動画がどれほどクリエーターに寄与していたかも伺えます。
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▲紹介画像はエロ全開ですが、当時のPVはネタ全開でした。
また、ISamu.のお部屋はロボット格ゲーの「廃鉄少女」、アクション&格闘の「TA-boo」など操作方法が独特なアクションゲームを生んでいます。当時のエロアクション系の中でも群を抜いてドットが神がかっています。また、プログラム技術のある方であり、CF2.5などツクール系に縛られない本格的なツールを使っていたのも印象的です。
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▲三作目のアクションゲーム。エロ同人系で背景も含めてここまで綺麗なドットを描くサークルは今でも少数。
Xiが活動を開始したのもこの時期。ラグナロクの二次創作からはじまり、丸呑みや触手に特化したアクションを作っています。
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▲当時は珍しいアクションRPG。
ちなみにXiは最新作「ViotoXica ~Vore Exploring Action RPG~」と、準新作「Viocide ~Vore Side Action RPG~」が本当にオススメ。操作挙動からレベルデザイン、エフェクトなどの挙動まで完璧であり、今のところ2.5D系のエロメトロイドヴァニア系で私が一番好きな作品。
この頃はまだ芽生えだしたのみの時期であり、本格的なエロアクションの本数も少なめ(小規模で言えばまだまだありますが)。ただ、芽は巻いたため、今後の発展のきっかけになっています。
また、エロ同人ゲームの分野に関して言えばどこか商業同人にも似た綺麗さがあるのですが、エロ同人の分野だとおねショタ、逆レイプ、巨乳、貧乳好き、凌辱、産卵、触手など特定のニッチさが先鋭化してきた時代です。ゲームコーナーではどこか恋愛系アダルトゲームにも似た綺麗な雰囲気がある一方で、同人ノベル、CG集同人誌の分野はニッチさを極めていました。
その他、この当時の同人の状況として、直接は遊べる同人エロゲには関係しませんが、二次創作エロ同人が活発でした。特にドラクエ二次、次点でFF7二次が最も流行っています。例えば同人漫画界の代表格であるクリムゾンは「FF7やドラクエ」の二次創作同人誌をこの時代は大量に発行しています。同人ゲームという点においては、オリジナルが増えはじめますが、上記の通りののの通信やSPLASH WAVなどは二次創作分野のゲームを製作しています。
このドラクエ二次創作の流行とニッチな嗜好が生まれ始める2000年代後半の流れは、後のエロRPGにも色濃く受け継がれます。。
続く。
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