月光ヤークト(製品版感想)

製品版感想(スクショあり)

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月光ヤークト
月光ヤークト[ツクヨミ・プロムナード]

姉の盾」の優れたシナリオ技法で隠れた名作を制作するサークルとして名前が挙がるツクヨミ・プロムナード。本作は、このツクヨミ・プロムナードの処女作「南海ヤークト」の正統続編が本作です。

医療病院・医科大学など医療研究のために作られた人工島が舞台。この島で起こる殺人事件を解決するために不良女刑事の主人公「夏世」が愛人で看護学生である「小冬」と共に捜査する推理もののツクール製アドベンチャーです。

いちおう、前作未プレイでも可能とのことで事件や島で出会う人物に過去作との繋がりはありません。8年ぶりの続編で、私の場合は約4年ぶりで前作は、夏世の暴走具合しか覚えていない状態でしたが、違和感なく楽しめたので今作からプレイしても問題無いでしょう。ただ、夏世と小冬の主従関係になったきっかけ、夏世の暴走した不良具合などは前作を知っておくことで深みになります。

前作と比べると、今作の方がUIの洗練、立ち絵・CG等の上達、そしてギャグや本筋のシナリオにも磨きがかかっており、テキストセンスもよくなっています。UIはコントローラ未対応なのが玉に瑕ですが。ただ、前作も負けず劣らず面白いので前作もプレイすることをお勧めします。

ジャンルは本格的な推理もの。島を舞台にした短編エピソード連番方式で計5つのエピソードがあります。逆転裁判など同系統でよく見かける、一見関係の無いエピソード群が、実は関係があり、最後のエピソードで一気に収束する形式を取っています。エピソードは体験版でプレイが可能な全くの独立したエピソード、関連性が見えない3つのエピソード、そして3つを関連づける最後のエピソード。テキストを読みながら随時、エリアを移動していくビジュアルノベル系スタイルの探索型ツクール製。現在の歩行キャラによって、モブやキャラのセリフが変わることも。ヒント機能が不十分な点があり、一部次に行く箇所を迷うことがありましたが、基本はヒント機能で次に行く場所、話しかける人物は分かるようになっています。

▲相談(ヒント)機能。会話の中に次に行く場所が分かる分かりやすいヒントが入っています。また、純粋に会話が面白いのでヒント関係無しにイベントが進むたび選びたくなる機能。

主人公「夏世」は推理系の主人公としては珍しく殺人を犯した人間に人権は無いという過激な考え方の持ち主。その考え方が本作独自の空気を作っています。通常の捜査で証拠・証言を掴み、推理発表の場で犯人を追い詰めるまでは同じですが、その後は逮捕して「罪を償え」で終わりではありません。犯人は夏世によるリョナ的で私的な性的リンチが加えられます。単純にブタ箱行きになることは珍しく、罪を告発しない代わりに人格破壊や社会的制裁を容赦なく加えるような終わり方が主。ある意味、「刑務所に入れば罪は償えるのか」との問題に対する一つの主張とも捉えられます。

破天荒な夏世、大人しそうに見えて小冬、他、様々なサブキャラや犯人を含めて登場人物それぞれが生き生きとしており、キャラのやり取りが非常に楽しい仕上がりになっています。また、犯人やサブキャラにスポットを当てて感想を書きましたが、暴走族の矯正、目が見えない少女へのケアなどモブに話すだけのイベントも各キャラが関わることによって、良い方向に変化していく小エピソードになっている場合があります。

▲主人公の夏世。前作よりは体面のみ一般礼儀を覚え、道行く人にも気さくに話しかけたりします。が、クズには相変わらず容赦ありません。


▲夏世をご主人様と崇める相棒兼愛人の小冬。大人しそうに見えて時折、有能でできる女の子像を見せつけます。


▲今作の新キャラのアシュリー。日本被れのアメリカ人で日本語ぺらぺーら。普通は主人公になるべき探偵。だけど、いつも推理で60%正解という中途半端さを出してしまう愛嬌のあるキャラ。


▲立ち絵ありの女性キャラ多数。ぶっちゃけ、一部を除いて立ち絵ありキャラのほとんどが死体か犯人になってしまいますが。

ほとんどのエピソードは、プレイヤー視点だと最初から犯人が分かっています。犯人が不明のエピソードも、犯人への性的制裁がエロのテーマのため、メタ的視点から「犯人は立ち絵ありの女性」のため、犯人当てそのものの難易度は低めです。むしろ、犯人をどう追い詰めて、最終的には制裁場面で何を吐かせるかなど推理的謎解きとドラマ部分が肝のシナリオとなっています。

推理パートでは、夏世・小冬の二人が島内の施設(町・病院・学校など)を自由に歩きまわりながら証拠集めやイベントを進めていきます。完全一本道のシナリオ。夏世・小冬パートはどちらかが行動不能でない限り、どの施設を誰が行動するのか選択可能。最後の追い詰めパート以外は基本的に別行動です。メニューには会話ボタンがあり、現在の捜査状況などを二人が語ります。会話ボタン=ヒントの役割を担っており、基本的には迷わずに進めます(いくつかは迷ってしまいましたが)。集まった証拠・証言、知った各種登場人物はメニュー内のデータベースに登録されます。

▲登場人物や場所、証拠などが記録されていきます。

そして、必要な証拠が全て集まると、夏世・小冬の会話で進行する検証パートとなります。それまでの証拠から何が起こったのかを推理していくパートで、検証中は何度も選択肢が出現。ただし、ノルマみたいなものはないので総当たりで選択していけば最終的に正解。

犯人を追い詰める時、ほとんどの場合において完璧な証拠が集まってはいません。ここが夏世の出番且つ本作の面白いところで、それまでの証拠を頼りに犯人に逃れさせないための供述を迫ります。いわゆる「正直に言ったら罪が軽くなるよ」という単純な話ではなく、誘導尋問や恫喝で犯人を追い詰めることで、犯人しか知らない情報を引き出します。ここは作者の執筆能力もあるのですが、会話の駆け引きが上手く、心理戦を行っているかのようです。

そして犯人を追い詰めた後は凌辱タイム。本作のエロはリョナ的な箇所に加えて、現代では認められていない「私的制裁」を加える爽快感を追求した内容。基本的に夏世が犯人にお仕置きをすることがエロのメインとなります。ジャンル的には百合リョナでしょうか。その内容は過激で、体験版シナリオでも「洗車用機械に閉じ込めて、息ができなくなるほど水を浴びせる」「あそこに水を集中的に浴びせる」など。製品版でも「降参できない状況で続リョナパン」など。

▲人体洗車タイム。

また、全裸土下座にこだわりがあるのか、ほとんどのお仕置きエロシーンは、この土下座を強要するところからはじまります。土下座すれば許されるかもしれない、でも駄目かもしれないという極限的な状況の中で加害者が全力で許しを乞う土下座を行います。

▲小冬の土下座はプレイの一貫ですね。その他はシリアスな状況での犯人の土下座のみ。

夏世の独特な観念があり、例えば情状酌量の余地があれば制裁の内容も穏やかです。ですが、クズの場合には人格が壊れるほどに徹底した調教を行うことも。安心してください。各シナリオに最低1人はクズを用意しているので。また、クズはクズなりの信念を持っている点も面白いところです。殺人を犯しているので擁護はできませんが、信念と信念の戦いみたいなところは感じます。

もう一つのエロは物語の合間に挟まれる百合系です。夏世・小冬のご主人様と奴隷なカップル以外にも今作で登場する仲間キャラとの浮気などを取り入れています。純愛系、お仕置き系共に登場人物は皆、巨乳であり、乳を強調した絵柄で攻めています。

さて、ここでシナリオの評価。

まず、推理ものとしては簡単な部類に入ります。推理系初心者がちょうど楽しめるレベルのもの。特に検証パートがすごく丁寧で論理的なため、特に推理系を毛嫌いしている方にこそお勧めと言いたいです。そして、推理系なのですが、本作で楽しむべき箇所はむしろキャラの掛け合いや登場人物間の関係など。

検証パートの夏世と小冬のやり取りは、キャラの魅力が詰まっており、掛け合いも良好。検証時も説明乙のような状態ではなく、純粋にやり取りが面白い検証になっています。

▲検証時もセルフがぶっとんでいる時があります。

冒頭に書きましたが、全ての事件はある一連の流れに沿っています(逆転裁判でも恒例の手法)。各事件は推理もののテンプレートに沿っており、検証段階になれば回答を見なくても真犯人の行動を推理できるようになっています。ただし、この一連の流れの推察は最後の章前半に感じる何らかの気持ち悪さを感じなければ推理できませんし、真相はたぶん推理で解けないミステリー分野です。

ラスボスの各事件への関わり方は、他の推理ものでも例を見ない驚くべき手法でした(推理系の物語はあまり読まないので、実は他で似たような話がある可能性も否定できませんが)。「姉の盾」ほど度肝を抜くシナリオではありませんが、それでも上々の面白さ。ビジュアルノベル的な作りの読み応えのある作品になっています。


▲主役2人は捜査中にいつもこんなノリのやり取りをしています。

▲学校の卒業生が行きつく場所

▲被虐体質の看護婦。いつもどこかでM全開な妄想を繰り広げています。

▲レズ女医への追求。

プレイ時間は6時間ほど、無駄な描写が無く、読み物系として優れている作品だと思います。やはりと言うかシナリオが練られていると先が気になって、睡眠削るハメになりますね。最後まで一気にプレイしてしまいました。エロ関係無しに良ストーリーを探しているならチェックしたい作品。

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