【エロRPG感想】アンチバタフライエフェクト(製品版)

エロRPG

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アンチバタフライエフェクト
アンチバタフライエフェクト

数年前にプレイしたゲームの感想のため、スクショはありません。

並行世界を渡り謎を解いてゆく「この世の果てで恋を唄う少女」、時間を何度も遡り仲間の悲劇を救う「シュタインズゲート」、深海に閉じ込められた人達が脱出を目指す「Ever17」、いわゆる世界系・並行世界系と呼ばれる考察ジャンルのビジュアルノベルです。私はこの名作達と同レベルで絶賛したい考察系ゲームがあります。それが「アンチバタフライエフェクト」です。

本作は架空のファンタジー世界で現代から、複数の過去・未来へタイムマシンで時間旅行をするRPGツクール製のRPG。ただし、ほぼ読み物寄りの作りなので、戦闘やダンジョンがあるノベルゲームと思ってくれて問題ありません。

優れたタイムリープ系の考察シナリオを楽しめる傑作

ゲームの序盤からプレイヤーが気づかない膨大な伏線を仕込み、それを少しずつ提示。中盤や終盤の山場では、そんなに伏線があったのか!と感嘆するほどの膨大な解決編がはじまります。ファンタジーかと思いきや、物理学・生物学(特に遺伝子学)の影響も見受けられる。整合性もあり、矛盾点もありません。

「世界観は最後まで誰にも解かせない」「それでいて、謎は全て提示して天才なら解けるかもしれない説得性を与える」と言うかのように、考察に対する凄まじいまでの執念を感じる作品です。

本作の世界観は奇妙です。

ゲーム開始時は作中で「現代」に該当する時代からはじまります。この時代、選ばれた人類は施設で天使様に仕えて暮らします。主人公は、友人達と共に施設で教育を受けている青年です。しかし、作中人物が当たり前と思うことでも違和感を感じる表現が目立ちます。

まず、天使に該当するキャラ達のドットがおかしい。ツクールでよく見かける触手魔物だからです。さらに施設内の人間は天使に仕えて、女性はこの天使の子供を産むことが「栄誉」とされます。主人公はとある理由で外界に追い出され、そこには虐げられ、貧困に喘ぐ人々が。明らかに天使(と言う名の魔物達)をヒエラルキー階級トップに置く歪なディストピア世界が成り立っています。文明レベルが現実の現代と同程度であることも違和感が増加しています。

やがて、主人公は支配者層と対立して危機を迎えことに。その時、未来から来た少女が主人公を連れて過去にタイムリープします。過去は人類が魔族と対立している中世の世界観でした。しかも魔族は主人公達が天使と崇めていた種族ということもわかります。

これが序盤のシナリオ。序盤だけでも、「触手魔物」という存在をプレイヤーに提示し、中世編に移動したことで、人類が魔族に敗北して搾取される側に立たされたから、現代のおかしな価値観が出来上がったことを想像できます。このように前フリと適切な回答の時期が上手いため、シナリオに飽きがきません。さらに、回答している謎が、全体のほんの僅かであることに気づかず、特定箇所での膨大なネタバラシ回でさらに驚いてしまう構造になっています。

考察関係は謎をきちっと提示した上で、そこから今に至るまでをある程度、頭の中で理解させています。さらに、見抜かれること前提で、新たな謎の提示、伏線を回収した上でのスマートな解決方法など、見抜いても楽しめるプロットにしています。

考察で一番凄まじいと思ったのは、ループの原点が提示されることだ。

実はゲーム開始時点で、すでにオリジナルから改変している世界線になっています。未来からタイムマシンに乗ってくる少女は1つ前の世界線の住人です。さらに少女は過去を改変されたから主人公の元にやってきたわけで、それは2つ前の世界線の誰かが1つ前の世界線に干渉したことになる。この繰り返しで成り立っているが、当然に改変していない1番目の世界線も存在するのは論理的道理です。

本作は、この、1番目の世界線から現在まで何があったかをある程度推察できる材料を提示しています。その上で事件を解決する流れまで結び付けています。

会話のセンスが良く、サスペンス・日常も楽しめる

本作は様々な漫画・アニメ・ゲームのリスペクトがあります。リスペクト度は小ネタレベルから、むしろ世界観構造の根本にまで影響しているものまで様々。特にタイムリープ系作品の有名作はほとんどがリスペクトされます。その中でも特に世界観規模でのリスペクトを感じるのは「クロノ・トリガー」です。

中世シナリオの人間と魔王の対立、そして英雄という概念など、クロノ・トリガープレイ者にはピンとくる内容。さらに原始・古代・未来に該当する時代も独特の解釈で、本作の世界観に導入されています。ただの真似ではなく「愛のあるリスペクト」ということも重要です。古代は「文明発達のした世界観」「中世への礎となっている」ことは共通していますが、その内容はクロノ・トリガーとは似て非なる世界観です。それでいて、原作を知っているとニヤっとしてしまう。

本作の発売日はクロノトリガーの影響がある作品「FFL2 時空ノ水晶」運営開始から半年後、「アナザーエデン」発表から4ヶ月後であり、奇妙な符号を感じたものです。

このような、高度なリスペクトが随所に見られます。さながら著作権侵害をしないレベルでスパロボクロスオーバーシナリオを導入していると言えるでしょう。

また、作者は、シナリオ全体のプロットと細部の日常プロット、そして表に出る文章力、その全てにおいて高い品質を保持しています。稀な執筆力を持っています。さらに本作の魅力は考察系シナリオのみではありません。

氏の会話テキストには特徴がありまう。まず、会話のやり取りで双方が喋るテキスト量は1~2行が基本。頭にスっと入ってくる文章です。読みやすくすることは徹底的に意識している形跡があり、難しい単語などは意図的に使っていません。セリフ選びのセンスが良く、ブラックジョークが効いていたり、話は真面目でも過去提示の情報からコメディになることも。

また、このわずかな文字量に含まれる意味は膨大です。会話者同士の関係、会話者の性格、世界観を暗に伝える内容、こっそりした伏線。一つの会話で複数の意味を持つこともあります。そのため、単純な文章が面白く心地良いばかりか、伏線は難しい内容を読むことなく自然と理解しています。

ドラマ面でも、この短い会話で複数の意味をもたせる手法が大きく影響しています。クドクド説明がないので各事件はスピーディーに進みます。キャラの感情がダイレクトに伝わりやすい効果もあります。

物語は各時代で固有に生きるキャラ達と主人公達が絡み、次第に仲間が増えていく冒険物語。各時代にはドラマが生まれます。現代では、主人公が下界に落とされると同時に、主人公の親友は先に落とされています。そして親友は薬と女と暴力に染まっていきます。その有様が丸々と分かります。また、現代だけでも下界と施設で暮らす人間の価値観の違い、下界で逞しく生きる人々、天使の理不尽な圧政など様々なエピソードがあります。基本的に一部の人物しか仲間にしないため、出会いと別れも大量に。1周目は必ず不幸になる人物がいて、将来的に助けるタイム系特有のシナリオ手法も楽しめます。

セリフが短いからこそ、大量のシナリオを短時間に消化できるようになっています。

恋愛などの愛情関係も興味深い。メインメンバー同士が仲良くなる正当なテンプレートパターンもあるが、各時代のむしろ異常とも言えるパターンの描き方がすごい。例えば冒頭で紹介した、「天使との子を産む」。これは各時代の天使と人間の関係を追うことで異種族との愛について考えさせられる崇高な話にも繋がっています。

ある恋愛関係においては、倫理的限界にチャレンジした愛のパターンがあります。「YU-NO」は時間的矛盾により、自分の娘と知らず、同年代の女の子と恋愛を育む近親恋愛的な描写があります。本作は同じく本人が知らないパターンで、ある意味近親恋愛よりもアンモラルな恋愛を描いています。判明するのはゲーム中盤だけど、伏線はゲーム開始後から存分に用意しており、恋愛そのものが考察の一つです。ゲームの核心的なテーマにも繋がっており、よくここまで倫理観に逆らう設定をシナリオ重視のゲームで上手に作り上げたと唸るばかりです。

さて、ここまで褒めてきたが、欠点もある。シナリオ中心のゲームにダンジョン攻略やボス戦などが混じっていること。シナリオ型ソシャゲで、シナリオを見るために戦闘をこなすと言えば伝わりやすいであろうか(現Verはある程度改善されたと聞いていますが)。また、ジャンルはRPGだが実質は一本道のため、クロノトリガーのように好きな時代に移動したり、前のダンジョンに戻るようなことができません。完全にシナリオ追尾型だ。RPGの利点が活かしきれているとは言えません。

ただ、実際にフィールドを移動することによる感情没入度や、時代によって同じ場所でも雰囲気が変わるなどのRPGを選択したことによるメリットももちろんあります。

本来は、世界系考察ビジュアルノベルが好きな層の話題に伝わらなければならなかったが、同人RPGという分野で発売されたため未だに隠れた名作扱いの本作、少しでも知名度を増やしたいものです。

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