アントロポセン1889(製品版感想)

アントロポセン1889_マップ4 製品版感想(スクショあり)

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アントロポセン1889
アントロポセン1889[スレイヴ・カンパニー]

▲フリゲ版の紹介動画です。(注:フリゲ版は現在、配信が終了しています。)

元はあつまーるで公開していたフリーゲーム「アントロポセン」をR18にしてシェアウェア化したゲームです。スレイヴ・カンパニーとしては「VOYAGE-崇高を俯瞰するための手引-」に続いての2作目ですが、こちらの方が先に出ていたゲーム。私はフリゲ版を未プレイなので同作者2品目の作品としてプレイしています。

現代とは隔離したもう一つの19世紀ヨーロッパにある機関都市アントロポセン。この都市はL社独占の技術により大きな発展を遂げています。その一方、都市は上層・中層・下層に分かれ、上流階級が上層で平和に住む一方、下層では貧民が虐げられて生きています。そしてL社は巨大な権力を握る歪な世界観が出来上がっています。VOYAGEでは後半に出てきた、この都市全体が舞台となっています。

スチームパンクという言葉は一般的に未来技術と19世紀英国の文化を混ぜたような世界観で使われるようです。その中でも本作はSF的な未知の科学技術力の高さが感じられ、独創性あふれる珍しい世界観になっています。

歯車と蒸気で動くゴンドラ・21世紀の現代でも解読不能となりそうな複雑な計算式や未知の科学・精巧な自動人形が動く摩訶不思議なスチームパンク世界を形成しています。オープニングからラスボスまで全ての町とダンジョンをオリジナルの1枚絵マップで描ききり、その上の小物等も全てスチームパンクな世界に合うようなオリジナル調。ロボットが番兵をして働き、人間が優雅に暮らす上層、人間も働く中層とマップごとに別の一面を見せてくれます。全体的に暗めの配色で本作の不気味さも表現。
アントロポセン1889_マップ1 アントロポセン1889_マップ2 アントロポセン1889_マップ3 アントロポセン1889_マップ4

ゴンドラなど乗り物を扱う場面では、複層レイヤーや大枠を取った小物による簡易的なアニメーションを取り入れており、感動する景観が幾度となく現れます。
アントロポセン1889_アニメーション1 アントロポセン1889_アニメーション2
▲巨大ネジがクルクル動いています。このような動き風景が要所要所で登場するので、背景関係の見応えがあります。

プレイヤーはその中を動く自動人形ビルギットとなり、主人メリルの命令の元、L社に反抗するレジスタンス組織に攫われた女の子を取り返すことになります。実際は、L社がモルモットとして苛め抜いた被験者が逃走したという方が正しいですが。また、基本はビルギットが主人公ですが、レジスタンス側の自動人形ニュメレールやその他の自動人形が主役になることもあり、L社とレジスタンスの攻防を描く叙事詩と捉えることもできます。
アントロポセン1889_オープニング1 アントロポセン1889_オープニング2 アントロポセン1889_オープニング3 アントロポセン1889_オープニング4
▲裏の人形技師であるメリルと自動人形のビルギットが反乱軍のアジトを調査するところからゲームがはじまります。

本作のシナリオは「感情がある自動人形」による生き様が一つの見どころになっています。ビルギットは初め、主人の命令通りに動く正真正銘の機械に過ぎません。反応は良いけど、あくまで主人の言われた通りに物事をこなすロボット。だけど、レジスタンスにてある未知の技術を使われることにより、感情を入手してしまいます。
アントロポセン1889_感情入手前1 アントロポセン1889_感情入手前2
▲最初は機械的だったビルギットですが
アントロポセン1889_感情入手後1 アントロポセン1889_感情入手後2
▲欲望に忠実に。

特に命とお金に対しての執着心、ドSっぷりを見せつけており、見方としては人形の身体に生まれてしまった女の子のようにも見えます。感情を入手後もメリルには自爆用爆弾という枷で捕らわれており、反抗しながらも彼と共にレジスタンスと対立することになります。

レジスタンス側の人形・ロボットも同技術が使用されており、もう一人のヒロインとも言うべき自動人形ニュメレールは、(同技術のため)性格が似ながらも、不幸キャラ。ビルギットやメリルの手で分解されたり、目を奪われたり、その他様々な悲惨な目に遭います。
アントロポセン1889_にゅめれーる1 アントロポセン1889_にゅめれーる2 アントロポセン1889_にゅめれーる3
▲敵対している自動人形。

メリルや彼女ら自動人形とのやり取りは、陰鬱な世界観と裏腹に突っ込み満載なコミカルな展開で進みます。合わせて、人形の感情と人間の感情は何か違うと違和感を感じることも。例えば感情入手後は生への執着感、死への恐怖が付くため、命のためなら簡単に裏切ったり秘密を吐いたりします。その思い切りの良さは人間の社会生活を送ってこなかった、ある意味赤ちゃんがそのまま基礎常識を持って大人になったかのような違和感。この違和感が、人間とのギャップが面白さにも繋がっており、且つ人形というアイデンティティにもなっています。
アントロポセン1889_イベント1 アントロポセン1889_イベント2 アントロポセン1889_イベント3

その中で本作の世界観や技術、文化を伝えたり、都市の腐敗など政治的な部分が伝わるようなシナリオ構造になっています。特に後半は「未知の技術」を演出するため、夢日記にも繋がりそうな意味の分からない造形物も次々出現し、本作世界観の不気味さも高まってきます。自動人形と合わさって未知の科学技術が作り上げる未来像を想像するのも本作の魅力の一つ。

戦闘はお金を消費するコマンド方式。たぶん人形なので稼働にエネルギーを使うからでしょう。通常攻撃はまともにダメージが与えられず、基本はMPの代わりにお金を使ってスキルで攻撃したり回復します。まさに「札束で殴る」が似合うゲームです。経験値等も存在しないため、まさしく金が全てです。
アントロポセン1889_戦闘

また、お金は二度と復活しない固定シンボル敵のドロップアイテムと、ダンジョンの固定位置に落ちているのみ。よって私は倒す必要も無い雑魚シンボルも全て倒してお金を回収していく、正しくお金の亡者みたいなプレイになりました。お金のためなら、人形なんて全てスクラップだ!という血も涙も無い勢い。お金がかなり溜まって余裕があっても、ボス戦で大量に使うため、心配で雑魚を倒してしまいます。(ボス戦はわざと負けると、あまり消費しないという裏技も)

そして、ラスボス戦で語るラスボスの動機はまさに私のプレイの仕方そのもので、ラスボスの体験をプレイヤーに実感させるために、このシステムを入れたのかとびっくり。

性癖は女の子人形が破壊される「メカバレ」に特化。1作目以上に性癖を突き抜けさせており、逆にメカバレ以外の性癖がありません(メカバレがリョナの一種なのでリョナが好きなら合うかも)。1作目は趣味を全開にしつつも手探りで多少は軟化して敷居を広げていたのが、こちらはメカバレが好きな奴のみついてこい!というメッセージを感じます。

メカが眼球を抉られるシーンが複数あり、他には足や手を切られたり、腹を掻っ捌いてその中の記憶を司る装置を抜かれたり。ここで「人間みたいな感情を持ち、特に生死と痛みに強く反応」という設定が生きてきます。このリョナにもなるシーンでは人形が痛みと死の恐怖に怯える演出が入ります。そこで、一枚ずつ腹を割き、中をいじり、物を無理矢理取り出すような描写を全て差分を入れることでリョナ感がよく出ています。
アントロポセン1889_メカバレ1 アントロポセン1889_メカバレ2 アントロポセン1889_メカバレ3
▲ビルギットに感情を与えるために傷をつけるシーン。

また、もう一人の主役とも言える自動人形「ニュメレール」は触手みたいな機関が仕込まれており、壊れた部分(目や下半身は除く)という設定があります。そのため、どんなに痛めて壊しても復活して、またスクラップにされ……と不幸系の役割を負わされてしまいます。不死系リョナと書けばどれだけ不幸か想像がつくと思います。
アントロポセン1889_スクラップ アントロポセン1889_傷
▲わざわざスクラップ時専用の歩行キャラを用意しているぐらい、何かあるとすぐ壊されてしまいます。眼球が抜き取られた状態の立ち絵も。

アントロポセン1889_メカバレ7 アントロポセン1889_メカバレ8 アントロポセン1889_メカバレ10 アントロポセン1889_メカバレ11
▲スクラップから回復したニュルメールを調査。

プレイ時間は3時間ほど、シーン数は7。本格的なスチームパンクと人形世界の中でSF的な世界観を解き明かしていくシナリオ重視のゲームです。

なお、本作の鍵となるイライザが精神崩壊から解放した理由は「PYGMA」、後日談は「ストロベリー・ヒル・ホテル」をプレイできるようです。(情報元はフリゲ版紹介動画の6:30あたりから)。また、「VOYAGE-崇高を俯瞰するための手引-」も続編となっています。

クリア現在、この世界のその後がどうなったかとか、すごい気になっているので、いつか「ストロベリー・ヒル・ホテル」はプレイする予定でいます。

購入はこちら
DLSITE:アントロポセン1889

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【エロADV感想】VOYAGE-崇高を俯瞰するための手引-(製品版)
架空のスチームパンク感溢れる架空の19世紀ヨーロッパを舞台に、自動人形の女の子がダークメルヘンな童話の世界に入り物語を改変するツクール製ノベルゲーム「VOYAGE-崇高を俯瞰するための手引- / スレイヴ・カンパニー」の製品版感想です。

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